『今のお店を誰か借りてもらえないかなぁ?』ここのところお客様からよくご相談を受けます。
つい先日ご相談頂いたお店のオーナーはこれからお店を新築し、そちらへ移る事が決まりました。今借りているテナントを別の方にそのまま譲る事ができればこんな良い事はありません。これは借りている方、大家さん、これから出店する方の3者にとって良い結果になるからです。
というのは、以前にも『テナントを借りる時にチェックしておきたい現状回復の話』というコラムでお伝えさせて頂きましたように、例外もありますがほとんどの物件はテナントを退去するときには借りる時の状態に戻してください。という“現状回復義務”が発生します。この“現状回復”をするにはコンパクトなお店でも約100万弱という費用がかかってきます。造作した壁や天井、ドアや内装すべてにおいて元の状態に戻さなくてはならないからです。オープン当初お金を掛けた店であればあるほど現状回復には費用がかかるでしょう。オープンして7~8年でもまだまだきれいだし、使えるこのお店。
現状回復したスケルトンの状態で次の借主がオープンできるまでに改装すると相当な改装費や一定期間の空家賃の発生そしてオープンまでに設計や工事などの時間もかかる・・・・そんな時に需要と供給が合えば次に借りたい方に内装、設備をそのまま譲るという“造作譲渡”ができるのです。
現在借りている方も現状回復費用の分コストダウンできますし、大家さんも次の借り手が見つかっている状態であれば家賃も滞りなく入ってくるし安心です。造作譲渡というのは居ぬき物件に残されている内装、厨房設備、什器などを買取り、もしくは譲り受ける事で、造作譲受金が発生する場合や無償の場合などケースバイケースです。 以下に造作譲渡する時の注意点を挙げたいと思います。
・契約書の内容を確認
まず、大家さんとの賃貸借契約をよく確認しておきましょう。大抵の場合は、契約書には状回復義務が記されているはずです。 ・貸主の承諾 次に、造作譲渡をすることについて、大家さんの了承は取れているかを確認したいところです。大家さんは誰でも、本来ならばまっさらに原状回復してもらうことを望んでいます。造作を受け継ぐことを了承したとしても譲渡料が発生することを快く思わない場合もあります。あとで「そんなことは聞いていない」とならないようにしたいものです。
・造作譲渡のリスク
繁華街の物件など、数年おきに店が変わるような物件では、何オーナーもが譲渡・改装を繰り返し、改装工事時の図面が見当たらないようなケースが多く見られます。本来ならば不動産店や大家さんが保管すべきものですが、数十年前の図面まできちんと管理できていない場合もあるでしょう。 物件に雨漏りや害虫、配管等の問題が発生したとき、図面がないために原因の追求が難しい場合もあります。造作を買った場合には、大家さんが対処してくれないことが多いため、留意しておきましょう。
・不用品の処分
「一式」として譲渡された場合、譲渡後の不用品の処分は、譲り受けた新オーナーの責任となります。なぜなら、「一式」とはそこにあるもの全てを含むからです。かといって、絶対に使わない大型の厨房器具などがあった場合、処分費用がかさむこともあります。そんなケースでは、見込まれる処分費用を値引いた譲渡費用にするなど、上手に交渉をしましょう。
・譲渡された厨房器具などが壊れていた場合
一旦、売買が成立したあとは、修理も処分も新オーナーの責任で行います。調子の悪いものはないか、譲渡前に設備の状態を聞いておきましょう。
・交渉のポイント
退居予定者の提示額が、妥当ではないと感じられる場合は、値引きの交渉をしてみましょう。
退居予定日までに次の入居者が決まらなかった場合、退居予定者はスケルトンへの原状回復工事をしなければなりません。そのため、適切な交渉を行えば、多少金額を落とせる可能性もあります。 ただし、物件の立地が良く、視認性も良い場合などは、ライバルが現れることも容易に考えられます。競争率の高そうな物件の場合は、あまり粘った交渉をせず、相手の条件をすんなりと飲むことも必要です。 テナントを退去したい方、入りたい方お互いにコスト的にメリットのある造作譲渡。当事者同士で話し合いをする場合や第三者に介入してもらう場合もあります。後々トラブルにならない為には正式な形で書面で残す事も重要になってきます。
せっかくの活用できる物件です、上手く交渉して確保したいものですね。